島根大学法文学部山陰研究センター
 

第2回山陰研究センター講演会

日時:2008年2月9日(土曜日) 13:30-16:30
会場:島根大学 教養講義室棟1号館 1階102号室
田坂 郁夫 学部長挨拶:田坂 郁夫(山陰研究センター センター長)

「山陰歴史館所蔵七絃琴―浦上玉堂、田代元春、杵村源次郎をめぐって―」
講演1:原 豊二氏(米子工業高等学校准教授)

講演要旨:
山陰歴史館には二張の七絃琴が所蔵されている。一張は文人画家であった浦上玉堂による制作であり、またもう一張は米子在住の医師・国学者であった田代元春による制作である。いずれもが米子町長を務めた杵村源次郎の旧蔵品である。田代元春の書簡には、浦上玉堂を米子へ招致する計画のあったことが窺われる。また、同書簡には大坂・木村蒹葭堂のことも記され、七絃琴の受容や近世文人のネットワークを考える上で、興味深い内容を伴っている。元春は、衣川長秋の著書『田蓑の日記』『やつれ蓑の日記』にも登場しており、その文化的営為は音楽・和歌・漢詩等、さまざまな分野に広がりを持つ。時代は下り、杵村源次郎は、浦上玉堂制作の七絃琴を手に入れた時の喜びを、漢詩に歌っている。それは竹内峴南の詩とともに『因伯時報』に収められ、現在に伝わる。杵村は、漢詩結社を組織し、山陰の近代漢詩の興隆を支えた人物であり、自らは七絃琴の演奏を大阪の妻鹿友樵に教わっている。杵村は江戸時代からの流れを汲み最後の琴士(琴演奏家)の一人であり、その死後、七絃琴は絶音の時代を迎えることとなる。

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「中世・出雲鰐淵寺の歴史的特徴と重要性」
講演2:井上 寛司氏(島根大学名誉教授・大阪工業大学名誉教授)

講演要旨:
 出雲市(旧平田市)別所町にある天台宗の古刹・浮浪山鰐淵寺(ふろうさんがくえんじ)は、中世には「(出雲国の)国中第一の伽藍」と呼ばれ、出雲大社の本寺として大きな勢力を誇り、また歴史的にも極めて重要な位置を占めていた。この鰐淵寺が最も大きな注目を集めた中世を中心に、どこが、なぜ、どのような意味で注目され、重要なのかについて、その概要を述べることとしたい。その結論を一言でいえば、鰐淵寺(と出雲大社との関係)が日本宗教の最も基本的な特徴である「融通無碍な多神教」といわれるものの本質を、極めてリアル、かつ具体的な形で現していることにあり、日本全国を見わたしても、これほど明確な形でそれがうかがえるのは、ここに限られているということにある。いわば、日本宗教の歴史的な本質が、ここに凝縮されている、それが鰐淵寺であり、出雲大社との関係だということにある。できるだけ簡潔に、その全体像を提示するよう心掛けたい。

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廣嶋 清志 企画室長司会・進行:廣嶋 清志(山陰研究センター企画室長)

 

質疑応答

質疑応答 質疑応答

会場の様子

会場のようす 会場のようす

暴風の中ご来場くださり,どうもありがとうございました。


アンケート結果(抜粋)

御回答,どうもありがとうございました。

「山陰歴史館所蔵七絃琴―浦上玉堂、田代元春、杵村源次郎をめぐって―」について

  • 全くの門外漢ですが,一張の七絃琴からこのように考察が広がるのかと興味深々聞きました。
  • 地域にも,豊かな文化が,かつてはあった事を確認した。
  • 特に田代元春の活動については,興味深く拝聴した。
  • もう少し時間があれば,ゆっくり聴けたのではないでしょうか。
  • 山陰の七絃琴文化を明らかにしたことは,日本の七絃琴文化の全貌を知る上でも貴重。松江についても,さらに新しい発見があると面白い。
  • 近世=江戸の文化が廃れていって,ほとんどが今残っていないのは悲しい。国学と漢学のつながりがとてもおもしろかった。
  • 江戸時代の文人のネットワークに山陰地域がどのように関わっているのかという点で興味深い話が聞けました。地域文化を支える階層というものにも考えを至らせる必要があると思いました。
  • 松江天満寺に藩医・田代家&分家の墓所があります。(墓誌不明)文化の残存のタイムラグについて,能ワキ方「進藤流」が明治初期に忘れていたと思われていたのが松江に残っていたことが判り,(タイムラグ論)にガッテンしました。

「中世・出雲鰐淵寺の歴史的特徴と重要性」について

  • 鰐淵寺の歴史的意義を柱に天皇制,宗教,出雲大社との関係(神社の歴史)と,幅広く,かつ深い学識に裏付けられた内容で,専門外の者にも興味の尽きない講義であった。鰐淵寺研究の学問的意義が素人にもよく理解でき,成果への期待が高まった。
  • 現代日本人の宗教観を理解するヒントになった。
  • プロジェクトの目的についてよく理解できた。
  • 興味深かったです。
  • 大変おもしろくもっと聞きたいです。
  • 出雲大社との関係など鰐淵寺についてよく分かった。
  • 思った以上に深く,哲学的である意味「人間とは何か?」を探ることのできる凄いスケールの研究だと認識した。
  • 鰐淵寺の解明が広い視野,高い視点からなさねばならない,と改めて思いました。
  • 先生の熱心なお話を聞き,大変興味を持ちました。
  • 井上先生は相変わらず元気で面白い。